2024年10月11日早朝、北アルプス八方尾根で撮影された低緯度オーロラ(提供:大西浩次)
2024年に日本各地で低緯度オーロラが観測されました。長野県内での撮影に成功した例も報告されています。
このプロジェクトは、市民科学(市民参加型の科学研究)として、オーロラの写真を学術研究に活用することを目指します。
募集する写真 長野県内や近隣県で撮影したオーロラ(低緯度オーロラ)
A:2024年5月11日深夜~12日未明
B:2024年8月12日深夜~13日未明
C:2024年10月11日未明
D:2025年6月1日深夜~2日未明
E:それ以外(たとえば、2003年10月など)
太陽活動に伴う大規模な太陽フレアやコロナ質量放出(CME)などによる高エネルギーの荷電粒子が地球に衝突することで、大規模な磁気嵐が起き、通信障害や発電所への障害、人工衛星の故障など、私たちの日常インフラに大きな影響を及ぼす可能性があることが分かってきました。2012年に太陽に良く似た恒星でも、通常の大きな太陽フレアの数百倍、数千倍規模の巨大なフレア現象を起こす「スーパーフレア」が発見され、私たちの太陽でもそのような巨大なフレアが起きる可能性が指摘されています。過去に起きた低緯度オーロラ現象の記録の研究は、そのような巨大なフレア現象や強い磁気嵐の頻度を推測する重要なデータになります。
また、2024年の低緯度オーロラは、宇宙空間から地球上の磁気変動など多くの科学データがあることで、逆に、どこの地域まで低緯度オーロラが観測されたのかのデータを組み合わせることで、太陽活動や磁気嵐と低緯度オーロラの関係を科学的に結び付けたり、オーロラのメカニズムに関する新しい科学的見地を得たりすることができる可能性があります。
日本における低緯度オーロラ観測は、1957-58年に東京天文台(現在の国立天文台)古畑正秋台長の呼びかけで日本各地のアマチュア天文家が参加し体系的な観測を成功させた例を先駆けとし、2024年5月には国立極地研究所 片岡龍峰准教授(当時)がX(旧ツイッター)で撮影を呼びかけ、集まった国内179点のオーロラ写真による分析が行われるなど、市民科学の典型例となっています。
長野県内や近隣県(石川県、富山県、新潟県、群馬県、埼玉県、静岡県、愛知県、岐阜県など)で撮影された低緯度オーロラの写真を集め、それをもとに低緯度オーロラの出現マップや3Dでの見え方マップを作ります。出現マップ・見え方マップおよび応募写真の一部は、「長野県は宇宙県」が開催・協力する県内外の展示会等で展示されます。(例:茅野市立八ヶ岳総合博物館 2025年7月~9月予定)
長野県は、県内77全市町村から天の川が観察できる星空観察の好適地であり、低緯度オーロラの微かな光をとらえている可能性があります。そして、「長野県は宇宙県」のネットワークを活かして地域市民により深くアプローチすることで、未発表データを見出し、来るべき次なる観測機会により多くの市民による観測が行われるよう、オーロラの科学を広めるきっかけとなることを期待しています。